90年代初期、テクノ黎明期の貴重なDJ MIXシリーズ「X-MIX」をリリースしていたK7。
そのK7から「X-MIX」の後続シリーズとしてテクノだけでなく、ハウス・クロスオーバー・チルアウトなど多様性のあるクラブミュージックにもフォーカスを当てたシリーズが「DJ KICKS」。
この大人気シリーズから2022年11月にリリーされたのがMOODYMANNと並ぶデトロイトハウス界の重鎮THEO PARRISHが登場!
THEO PARISH / DJ KICKS Detroit Forward
”Detroit Foward”とサブタイトルがつけられている通り、全てデトロイト産と思われる全19曲が未発表トラック!
ベテランならではの奥深さが窺える選曲、ハウスだけでなくテクノ・ジャズ・ソウル・ダブ・ブレイクビーツなどジャンルの壁を心地よく横断します。
ファーストにして名盤と名高い「First Floor」から最新作「Wuddaji」までのキャリアを包括したかのような本作の内容はこちら↓
DISC 1
- DE’SEAN JONES & IDEEYAH / Pressure
- DONALD LEE ROLAND Ⅱ / Simba’s Theme
- MEFTAH / When The Sun Falls
- THEO PARRISH / The Real Deal
- SPECTER / The Upper Room
- DEON JAMAR / North End Funk
- IAN FINK / Moonnaite
Disc 2
- JOHN C & MEFTAH / Full
- MBTHELIGHT / Again
- DE’SEAN JONES / Psalm 23
- RAYBONE JONES / Green Funk
- JOHN DIXION / Wind Drifts
- WHODAT & SOPHIYAH.E / D’ont Know
- KESSWA / Chasing Delerium
- RAJ MAHAL / Hudson’s
- DE’SEAN JONES / Flash Spain
- JASON HOGANS / Surrounded By Trees
- H FUSION / Experiment 10
- STERLING TOLES / Janis
ビターでほろ苦いジャジーソウルな選曲から一転して重厚かつ不穏なフレーズを繰り返すキーボードに絡みつくギターとピアノの音色が不思議と調和するこれぞ最近のTHEO PARRISHを象徴するような曲「The Real Deal」。
この深い闇に光を注ぎこむようなアップリフティングなベースラインでダンサンブルなリズムが跳ね回るSPECTER「The Upper Room」。
このライブ感溢れる曲からデトロイトテクノな雰囲気を醸し出すDEON JAMAR「North End Funk」からデトロイトのジャズピアニストIAN FINKによるジャズファンクなグルーヴを醸し出す「Moonnight」。
DJ MIXとしては曲数が少ない7曲でDisc 1は終了しますがそれでも内容が濃いです。
続くDIsc2のオープニングはなんともビタースウィートです。
JHON CとMETFAHによる濃厚なメロディーと色気のあるラップヴォーカルが耳にまとわりつく「Full」。
この芳醇な香りを一気に昇華させるキラートラックがDESEAN JONES「Psalm 23」。
ロック・ソウル・ジャズが程よくブレンドされた聴かせる歌もので派手な展開にグッときます。
中盤からはデトロイトハウスの重鎮としての奥深い選曲を披露!
URの新世代を牽引するJOHN DIXONによるGALAXY 2 GALAXY直系のハイテックソウルに仕上がった「Wind Drifts」。
GALAXY 2 GALAXYのメンバーだけあってシンセストリングスのメロディーと哀愁感漂うエレクトリックピアノの音色が心地よいグルーヴを醸し出しています。
前半でロッキンなジャジーソウルを披露したDESEAN JONESが再び登場。
図太いビートに硬質的なハット音にミニマルなジャジーフレーズ、乱れうつトライバルなパーカッションと踊れる要素強めのハードハウスに仕上がった「Flash Spain」。
思わず同じアーティストかと疑いたくなるような変貌ぶり。
ラストに近づいたこのタイミングでなんとも実験的なブロークンビーツH FUSION「Experiment」をミックス。
金属的な響きと鳴り止まないドラムロールのような重複するリズムが終盤らしからぬグルーヴを生み出しています。
ちなみにこのH FUSIONはTHEO PARRISHの側近です。
そしてラストはSTERLING TOLES「Janis」でフィナーレ。
この曲もフィナーレらしからぬ不穏な響きを放つ実験的なブレイクビーツ。
以上、全19曲。
ベテランならではの重厚感ある選曲、踊らすのではなく聴かせるDJ MIXです。
年齢を重ねるごとに年代物のブランデーがわかってくるように、このようなビターな選曲がグッとくるようになりました。
このグルーヴは20代〜30代で醸し出せるものではありません。
THEO PARRISHというフィルターを通してデトロイト産ミュージックの奥深さが堪能できる今回の「DJ KICKS」、万人受けする内容ではありませんがグッとくる人はリピート再生すること間違いなし。
一度お試しください😀