大名盤『Dig Your Own Hole』の熱気をそのまま継承しながら、次作『Surrender』の世界観を先取りするかのような趣を備えた、1998年リリースのDJ MIX。
ブレイクビーツやテクノのみならずソウルやファンクといった彼らのルーツを感じさせる選曲によるオールジャンル的な内容。
単にレコードを繋ぐだけにとどまらず、エフェクトやループ、サンプラーを駆使することでライブ感あふれるミックスに仕上がっている。
Chemical Brothers「Brothers Gonna Work It out」


オープニングを飾るのは、モータウンの名匠ウィリー・ハッチによる名曲にして本作のタイトルにも冠された「Brother’s Gonna Work It Out」。
ソウルフルで力強いこの曲を最初に選曲するあたり、このMIXがただのクラブミュージックの寄せ集めではなく、彼らのルーツを横断して選曲されるストーリーであることを冒頭から感じさせる。
ケミカル・ブラザーズの「Elektro Bank」12インチに収録された「Not Another Drugstore」。
ブレイクビーツとラップを融合させた鋭いサウンドが特徴で、彼らならではの編集感覚によって生み出される断片的かつ疾走感あふれる構成がフロアを揺さぶる隠れたキラーチューン。
続いて登場するのは、ケミカル・ブラザーズのビッグ・アンセム「Block Rockin’ Beats」を、4つ打ちテクノへと再構築したザ・マイクロノーツによるリミックス。
地鳴りのように轟くキックと雷鳴を思わせるハイハットが重層的に絡み合い強烈なグルーヴを生み出す大箱映えするナイスリミックス。
ネタの宝庫として知られ、数えきれないほどの楽曲でサンプリングされてきたザ・ジミー・キャスター・バンチ。
特にこの「It’s Just Begun」は、ヒップホップやハウス、ファンクをはじめとするジャンルで数多く引用され、フロアを揺らす定番リフとして今なお愛されている。
彼らのルーツを辿る音楽の旅はまだまだ続く。
1973年にリリースされたファンクチューン、バッダー・ザン・イーヴィル「Hot Wheels」もそのひとつ。
重厚なベースラインと鋭いホーンセクションが絡み合い、聴く者を瞬時に1970年代の熱気あふれるクラブへと引き込む。
ディスコやファンク、ソウル路線を経た後、ケミカル・ブラザーズが得意とするアシッドテクノへと回帰。
まずその伏線となるのがザ・マイクロノーツ「The Jazz」。
タイトルからは想像しにくいが、アシッドテクノ特有の鋭利なシンセとリズム感が前面に押し出され、前半のソウルフルでオーガニックな選曲から次の盛り上がりへの期待感を巧みに与えている。
まさに理想的な TB-303 使い方というべき、ピコピコと電子音が縦横無尽に駆け巡る THE SEROTONIN PROJECT 「Sidewinder」。
初期デジタル・ブレイクビーツの象徴ともいえる、CHEMICAL BROTHERS の知られざる名曲「Morning Lemon」。
斬新なリズムと緻密なサウンドデザインが光り、彼らの革新的な音楽性を改めて実感させる一曲。
CHEMICAL BROTHERS よりも早く、ダンス、ロック、ヒップホップの融合に挑んだ実験的ダンスユニット MEAT BEAT MANIFESTO の「Mars Needs Women」。
先進的なサンプリングとリズム感覚が際立ち、後のビッグビートやエレクトロ・ダンスミュージックに大きな影響を与えた先駆的な一曲。
アパッチを彷彿とさせる、パーカッシブで躍動感あふれるグルーヴが印象的な BARRY DE VORZON「The Riot」。
リズムの力強さと緻密な構成が絡み合い、トラック全体に緊張感と高揚感を同時に生み出している。
ケミカル作品にも強い影響を与えた1994年にリリースされたミニマル・テクノの金字塔DBX「Losing Control」。
CHEMICAL BROTHERS のリミックスワークの中でも特に印象的であるUKロックの大御所 SPIRITUALIZED 「I Think I’m In Love」でのフィニッシュ。
原曲のドリーミーでサイケデリックな雰囲気を残しつつ、ビートとサウンドデザインで大胆に拡張され、ミックス全体のクライマックスとして強烈な余韻を残す。
まさに彼らのルーツを辿るような完全フロア仕様のDJ MIX。
単なるテクノ・ハウスの羅列にとどまらず、ソウルやファンク、ディスコを巧みに織り交ぜるあたりに、選曲のセンスと技量の高さがうかがえる。
他にも、CHEMICAL BROTHERS の楽曲を DAFT PUNK や FATBOY SLIM がリミックスした隠れた名曲を紹介しているのであわせてチェックがおすすめ↓
