かつては錦市場の中にあった富美家。
昭和の食堂そのままの空気をまとった店内が印象的だったが、今はすぐ近くに移転してずいぶんお洒落な内装になった。
観光客だけでなく女性ひとりでも気軽に入れるうどん屋としても人気。
そんな京都の老舗でもある富美家のうどんだが、実は京都のスーパー「フレスコ」で買うことができる。
フレスコで常備されているラインナップは〈しっぽく〉〈しのだ〉〈富美家鍋〉の3種類。
価格はだいたい500円前後。
ちょっと高めだけど、70年以上の歴史ある味を手軽に家で楽しめるのはありがたい。

いわゆる「名店監修シリーズ」のような大手メーカーが工場で大量生産してるものとは違って、これはまさに〈富美家製〉。
原材料を見ても保存料や添加物などの余計なものは一切入っていないから、賞味期限は短めで購入日を含めて4日間。
ちなみに「しのだうどん」は、関東でいうところの〈きつねうどん〉。
甘く炊いたお揚げがのったあの定番スタイル。
ここでひとつ注意したいのが、京都で言う「たぬきうどん」は関東のような天かす入りではなく、刻んだ油揚げと九条ネギが入った“あんかけうどん”が出てくるので要注意。

作り方はいたってシンプル。
鍋におつゆをあけて火にかけると、昆布と鰹のやさしい香りが立ちのぼる。
グツグツと湯気が立ち始めたタイミングで、袋から取り出したうどんを投入。
麺がふわっとほぐれてきたら、すかさず具材を加えてあと3分。
湯気の奥から、甘く煮含めたお揚げの香りと京風だしの匂いが広がり、まさに富美家の店先に立っているかのような気分になる。

さて、お味は――
まさしく「富美家」の味そのもの。
昆布と鰹の旨みがしっかり効いていて、まろやかな甘みと奥行きのある塩気が絶妙で自己流では再現できない味。
これはもう、ほぼ店そのままの再現度。
関東出身の自分のうどん出汁のルーツは「富士そば」。
あの真っ黒でパンチのある関東風のつゆに慣れていたから、関西風の出汁はどうも物足りないと思ってたが「富美家」は格別。
京都の名水「錦の水」を使ってるからだろうか?最後の一滴までおつゆを飲み干したくなる。
そして添加物なしだから罪悪感ゼロ。
付属の七味も高クオリティで山椒がほんのり香って、全体の風味をぐっと引き締めてくれる。
油揚げも甘辛くしっかり味が染みていてしかも贅沢に2枚入り。
シャキッとしたネギがアクセントになってシンプルながら完成度の高い一杯に仕上がっている。
メインの出汁から脇役の薬味に至るまで手を抜かない感じが実に京都らしい。
確かに、スーパーうどんとしてはちょっと高めかもしれないが、自宅でこのクオリティが味わえるならむしろ安い。
ちなみに「富美家鍋」になると、えび天が一本ドカンと入ってくる。
これは土鍋でじっくり温めて食べると100点満点の一杯。
このクオリティのうどんが近所のフレスコで手に入るというのが最高。
名店の味が、特別な通販でもなく、繁華街でもなく、いつものスーパーでサクッと買えてしまう手軽さ。
忙しい平日でも、ちょっと贅沢したい休日でも、いつでも“富美家の味”が楽しめるというのは、なんともありがたい話。
なんと富美家のラーメンもあった!↓