
京都には蕎麦の名店が数多くあるが、なかでも三味洪庵は観光客だけでなく地元の人にも静かに愛され続けている一軒。
老舗の佇まいと白川沿いの風情あるロケーション、観光ついでではなくここを目指して訪れる人も少なくない。
この日は初夏とは思えないほどの強い日差しで、気温はすでに30℃を超えていた。
体が自然と冷たいものを求める中、ふと思い出したのが以前から気になっていた名物“すだちそば”。
キリッと冷えた出汁に、爽やかな香りと酸味が広がる一杯をいただくには、これ以上ないタイミングだと思い店へ向かった。
場所は地下鉄東山駅から歩いてすぐ。
平安神宮や青蓮院といった観光スポットのすぐそばで散策がてら立ち寄りやすい立地。
店は白川沿いにあり、風情のあるロケーションは写真映えも抜群。
通りすがりに立ち止まって撮影していく人の姿もちらほら。

訪れたのは平日のちょうど正午ごろ。
観光シーズンなら確実に行列ができているであろう時間帯だったが、この日は運よく待ち時間ゼロでそのまま入店。
ちょうどテラス席も空いているとのことだったが、1人利用の場合はチャージ料が330円かかると聞き、ひとまず店内を選択したが、店内の窓越しから見える白川の流れがあまりに風情たっぷりでテラス席にすればよかったとちょっとした後悔。
建物は京町屋らしく、入口の印象とは裏腹に中は驚くほど奥行きがある。
店内は落ち着いた空気に包まれていて、壁や扉、柱などの調度品からは100年以上の歴史がしっかりと伝わってくる。

落ち着いた空間と穏やかな景色が自然と食事への期待を高めてくれる。

冷たさの中にほんのりとした甘みと香りがあり美味。

注文からおよそ10分。
器を持った店員が静かに近づいてきたのが視界に入り思わず背筋が伸びる。
そして目の前に置かれたのが、今回の目当て――すだちそば。

丼の表面は薄くスライスされた徳島県産のすだちでびっしりと覆われている。
このビジュアルはかなり印象的で目にした瞬間思わず一瞬手が止まる。
さっぱりしていそうだがどんな味わいになるのかはまだ想像がつかない。
そばは、自家製粉・石臼挽き。
細めながらしっかりとした輪郭があり、透明感のある盛りつけが清涼感をより引き立てている。

気になる味はというと——
すだちの爽やかな酸味とあっさりとしながらも旨みのある特製の冷かけだしに、しっかりとしたコシをもつ蕎麦が合わさり、全体として非常にバランスの取れた仕上がりで文句なしに美味い。
暑さの厳しい時期にこの清涼感はありがたい。
見た目のインパクトに加えて食後にはしっかりと満足感も残る。
量はやや控えめではあるが丁寧に味わいながら食べ進めることでちょうどよい満腹感が得られる。
次回はぜひ、テラス席でこの一杯を楽しんでみたい。
インフォメーション

三味洪庵(さんみこうあん)
住 所:京都市東山区石泉院町393番地
営業時間:11:00〜20:30
定 休 日:月曜日(祝日の場合は火曜日休み)