京都屈指のパワースポット「鞍馬寺」で宇宙エネルギーを授かってみる

京都に移住してまもなく16年経つがそれでも定期的に足を運んでしまう場所――鞍馬寺

春や秋の観光シーズンはもちろん、よく晴れた日にもしとしとと雨の降る日にもふと行きたくなる。

ただそこにいるだけで気持ちがすっと整うような不思議な場所。

初めて鞍馬寺を訪れたのは京都に移り住む3年ほど前のこと。

まだ20代の中頃で、都会育ちの自分にとって“山寺”という響きには、どこかノスタルジックでグッとくるものがあった。

その日は、ジャケパンにトリッカーズのブーツという、今思えばかなり場違いな装いだったけれど、なぜかその日の記憶だけはやけに鮮明に残っている。

20代中頃の自分。
おばちゃん連中の写真を撮ったお返しに半ば強引で写真を撮られた。

初めて鞍馬寺を訪れてからまもなく20年経つがいまだに飽きることはない。

年に4〜5回はふと足が向いてしまう。

なぜそこまで?と聞かれたら、「鞍馬寺には、山寺の魅力がすべて詰まっているから」――と答える。

その全てが、日常から少しだけ意識を引き離してくれる。

自分にとっては、それが必要な時間なのだと思う。

門前の静けさから、本殿金堂に続く石段、深い緑に包まれた木々の気配。
山の中を歩き、風を感じ、そして少し汗をかく。
この圧巻の景色が日常から少しだけ意識を引き離してくれる。

▪️気軽に味わえる小さな旅

よく晴れた日には決まってお気に入りの「宝ヶ池駅」から出発する。

観光列車「きらら」に乗り込み鞍馬へと向かう。

のどかな市街地を抜けていく車窓の風景は,どこか日常の延長にあるようで安心する。

しかし「二ノ瀬」を過ぎたあたりから、車窓の景色は急に山の色を濃くし、空気も変わってくる。

トンネルを抜け、木立の間を走る頃には、すっかり旅の気分。

終点「鞍馬駅」は山あいの空気に包まれた小さな駅。

やたらと目につく天狗と牛若丸に紛れて萌え系も充実している。
木造の駅舎は寺院を思わせる趣があり、近畿の駅百選に選ばれている。

駅から山門までは徒歩で5分ほど

鞍馬駅周辺にはコンビニやスーパーといった便利な施設はなく、山門までの参道に並ぶのは数軒のお土産屋と飲食店くらいなので、軽食や飲み物は出町柳駅の段階であらかじめ調達しておくのがベター。

もし鞍馬駅近くの「多聞堂」が営業していれば、名物「牛若餅」はぜひとも手に入れておきたい一品。

ほどよい甘さと素朴な味わいが、山道を歩く身体にやさしく染みわたる。

鞍馬寺の山門入口で入山料として「愛山費」500円を支払い、天気が良ければ本殿まで歩いて登るのが気持ちいい。

雨天や体調によってはケーブルカーを使うこともできるので無理のない選択もできる。

参道の途中には、毎年10月22日に行われる「鞍馬の火祭」で知られる「由岐神社」が佇んでいる。

杉木立に包まれた境内は静けさに満ち、祭の喧騒とは対照的な、落ち着いた空気が流れている。

▪️宇宙エネルギーを授かってみる

山道を歩くだけで、自然と呼吸が深くなり、心が静まっていく。

まるで森そのものがヒーリングを与えてくれているような感覚。

そんなネイチャーヒーリングの恩恵を受けながらおよそ20分ほど登っていくと最後に待ち構えるのは石段。

疲れがたまった足腰にはやや厳しいが、これを登りきった先に現れるのが、鞍馬寺ならではの絶景だ。

山々を一望できるマウンテンビューは、まさに山寺の醍醐味。

そして本殿金堂の前に広がるのが京都屈指のパワースポットとして知られる「金剛床」。

人目を気にせずその中央に立ち両手をゆっくりと広げてみる。

祈りとともに静かに目を閉じ、足元から宇宙に繋がるような感覚を味わってみる。

自分も人目を気にせずハンズアップしてみたら心なしか気持ちがふわっと軽くなるのを感じた。

心が浄化されたら本殿のある金堂へ。

ここに祀られている「尊天」とは、千手観音菩薩・毘沙門天王・護法魔王尊の三尊が一体となった鞍馬独自の本尊であり秘仏とされている。

その御姿が一般に公開されるのは60年に一度、次の御開帳は2046年とされている。

金堂の内部は天井が高く、外光が届かない薄暗さが荘厳な空気をまとっている。

その奥には「清浄髪」が納められた地下へと続く階段があり、蝋燭の灯りだけに照らされた空間へと導かれる。

初めて訪れる者にとっては、足を踏み入れるのをためらうほどの暗闇と静けさに思わず恐怖と緊張が走るかもしれない。

だが、そこに奉納されているのは骨や遺灰ではなく「髪」。

髪は身体の一部でありながら、切り離してもその人の“分身”のように在り続ける。

その分身を尊天のそばに置くことで、いつでもその加護を受けられるように――

そんな思いが込められているのだという。

その由来を知ってからは恐れはすっと消えて、むしろ静かな敬意をもってこの空間を訪れるようになった。

そこには確かに見えない力が満ちている。


▪️手の届きそうな距離感で国宝「毘沙門天立像」を拝む

鞍馬寺を参拝した後は寺宝が奉安されている霊宝殿に立ち寄るのがおすすめ。

寺宝をはじめ、鞍馬山の自然や歴史にまつわる資料を数多く収蔵・展示しており、「信仰・自然科学・人文科学の総合博物館」と銘打たれた三階建ての建物。

館内には、鞍馬山に自生する昆虫やキノコ、岩石などを紹介する自然展示室や、牛若丸(源義経)に関する資料、鞍馬寺に伝わるさまざまな寺宝が展示されている。

また、同寺に縁の深い歌人・与謝野晶子の書斎「冬柏亭(とうはくてい)」も移築再現されており、文学好きには見逃せない一室となっている。

そして、なかでも圧巻なのが仏像奉安室。

畳敷きの空間に、ガラスケースなどの隔たりなく、国宝1体、重要文化財2体を含む合計7体の仏像が間近に安置されている。

手を伸ばせば届いてしまいそうなほどの距離感で、平安時代から受け継がれてきた尊像と対峙できるこの贅沢さは、他ではなかなか味わえない。

シーズンオフには人影もまばらでこの静寂と密度ある空気を独り占めできることもある。

それでいて入館料はわずか200円。

内容を考えれば、これは破格というほかない。

信仰と自然科学と人文科学の総合博物館として3階建ての館内には鞍馬山の昆虫やきのこに岩石などの展示室に牛若丸の歴史紹介やゆかりの寺宝が展示されている。

他にも鞍馬寺にゆかりのある与謝野晶子の書斎「冬柏亭」を移築再現された部屋の展示もある。

いろいろ盛りだくさんの霊宝殿だが、なんといってもお値打ちなのが国宝展示ではありえないぐらいの距離感で拝観できる仏像奉安室。

国宝1点、重要文化財2点のほか合計7点の仏像が少し広めの畳部屋にガラスケース等遮るものがなく手を伸ばせば届く距離感で奉安されている。

シーズンオフであれば人もあまり来ないのでこの贅沢な環境を独占することもできる。

これで入館料200円は破格と言わざるをえない。

奥の院へ行く途中にあるためスルーされがちだがわざわざ立ち寄る価値は十分にあり。
中学校の校内を彷彿させるようなレトロな館内。この階段の質感がお気に入り。

これだけの魅力が詰まっているからこそ、鞍馬寺には毎年5回以上は足を運んでしまう。

誰かに「京都でどこかおすすめは?」と尋ねられたとき、迷いなくこの鞍馬を挙げることにしている。

中でも、金堂前の「金剛床」は外せない。

その幾何学模様の中心に立ち静かに両手を広げれば、まるで宇宙と繋がるような感覚になる。

大げさに聞こえるかもしれないが、ここに立つことで、日々の喧騒で薄れていた感覚が澄みわたり、心身が整っていくような気がする。

だから自分にとって鞍馬はただの観光地ではない。

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