
京都に移住して良かったと実感する理由のひとつは、街中いたるところに美味しいラーメン屋があること。
さらに、昔ながらの中華そばを出す食堂が多いのも嬉しいポイント。
そして、実際に暮らしてみて気づかされたのが──
ラーメンだけじゃなく、本格的な中華料理店も充実していること。
しかも京都には「京都中華」という独自のジャンルがしっかり確立されていて、いわゆるコッテリ・油っぽい中華とは違い、あっさり&上品な味付けでとにかく食べやすい。
和食文化が根付く京都だからこそ、中華料理も足し算ではなく“引き算の調理”が求められると言われている。
例えば餃子にはニンニクやニラを使わず、ラードの代わりに植物性の油を使う。
さらには、鶏ガラに昆布を合わせた中華の出汁など、どこか和の要素が感じられるのも特徴。
お客様には芸妓・舞妓や旦那衆、客商売の常連も多く、匂いがきついものは敬遠されがち。
そういった背景が、自然と上品であっさりとした京都中華のスタイルを育てたと言われている。
そんな京都中華を味わうなら、今回紹介する「鳳泉」は外せない一軒。
場所は京都市役所すぐ近く。
河原町からも徒歩圏内で、主要バス停も近いのでアクセスは抜群。
鳳泉は2009年オープンの比較的新しい店ながらそのルーツは老舗「鳳舞」。
オーナーシェフは鳳舞で20年以上腕を振るった方で、その流れをしっかりと受け継いでいる。
ちなみに、鳳舞は2009年に閉店してしまったが、バンド「くるり」の楽曲「三日月」のMVで店内の雰囲気を見ることができる。
そんな京都中華のレジェンド「鳳舞」の味を受け継ぐ「鳳泉」。
平日の昼前に訪れたにもかかわらず、すでに店内は満席。
12時を回る頃には外に行列ができはじめ、地元民だけでなく観光客にも人気の高さがうかがえる。
メニューはどれも魅力的で、選ぶのにひと苦労。
今回は定番中の定番、京都中華を代表する「カラシそば(エビカシワソバ)」と「酢豚」を注文。
店内を見渡すと、観光客らしき2人組のテーブルに4〜5品並んでいることもしばしば。
せっかくの京都中華、いろいろと食べ比べてみたくなるのは無理もない。
注文から約10分ほどでまず運ばれてきたのは、黄金色に輝く酢豚。

具材はいたってシンプル。
丸くくり抜かれた玉ねぎにきゅうり、そしてパイナップルのみ。
酢豚の豚肉もすべて一口サイズで、とても食べやすい。
そして気になるそのお味は──想像をはるかに超える美味しさ。
甘酸っぱくさっぱりとした餡が豚肉や野菜にほどよく絡み、口に運ぶたびに箸が止まらなくなる。
気付けばその餡までも、思わずレンゲで最後まですくって飲み干してしまいたくなるほど。
ただの酢豚ではなく、京都中華ならではの品のある一皿に仕上がっていた。
そしていよいよ、お待ちかねのカラシソバが登場。
湯気の立つ丼には、つややかな餡がたっぷりとかかり、具材にはプリッとした海老とやわらかな鶏肉、青菜やきのこなど彩りも豊か。
そこにツンと香るカラシの風味がふわりと立ち上り、食欲を一気に刺激してくる。

見た目はまさにあんかけラーメンそのもの。
ただ、京都中華らしく麺はやわらかめの茹で加減で、最初は少し物足りなく感じるかもしれない。
けれど、そこにしっかり効いたカラシの風味が加わることで、一口ごとにクセになるあと引く美味しさに変わる。
ツンと鼻に抜ける辛さと、とろみのある餡のやさしさのバランスが絶妙で、気付けばあっという間に完食してしまう。
この不思議な中毒性こそが、京都のカラシソバが長年愛され続ける理由かもしれない。

少食の自分でも気付けばすんなり完食。
本格的な広東中華のクオリティにもかかわらず、価格は驚くほど良心的。
だからこそ、平日でも行列ができるほどの人気ぶりなのだろう。
京都に来たら、ぜひこの「京都中華の極み」とも言える鳳泉の味を体験してほしい。
インフォメーション

鳳泉(ほうせん)
住 所:京都市中京区河原町二条上る清水町359 AXEABビル 1F
営業時間:11:30〜14:30 / 17:00〜20:00
定 休 日:月曜日・火曜日
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