DJのセンスが光る!名アレンジでクラブ仕様に生まれ変わった邦楽リミックスまとめ

今回はDJによるリミックスで“クラブ仕様”に生まれ変わった邦楽を特集。

スローバラードが4つ打ちのフロア向けトラックに化けたり、DJの個性が色濃く出たマニアックな仕上がりになっていたり──原曲のイメージが一気に変わるのもリミックスの醍醐味。

有名曲から知る人ぞ知るレアな1曲まで、聴きごたえあるリミックスをまとめて紹介。

SAZM
SAZM

筆者紹介・・・元大手CDショップにてクラブ/テクノのバイヤーを担当。

ケン・イシイ、石野卓球、田中フミヤ、DJ EMMAといった日本のレジェンドDJたちを敬愛。

自身も趣味でDJ活動を行い、現在も定期的にクラブへ足を運び続けている、音楽熱の冷めないアラフォー世代。

サカナクション / ルーキー(石野卓球REMIX)

2012年リリースのシングル「僕と花」に収録。

この「ルーキー」は4枚目のシングルにして大ヒットした曲なので知っている人も多いはず。

原曲が持つメロディアスな要素を削ぎ落とし、アシッドなベースが浮遊する音数少なめなトラックに「行かないで、見渡して〜」というボーカルパートを効果的にアレンジ。

抑制の効いたリミックスとして、原曲のイメージを変えすぎずにフロア仕様へと転換させている。

UA / HORIZON(FUMIYA TANAKA REMIX)

藤原ヒロシ氏がプロデュースした1995年発表のUAデビュー作。

リミキサーは当時22歳の田中フミヤ氏。

ハードミニマル全盛だった彼のキャリア初期にあって、このリミックスは真逆のアプローチ。

ざらついた質感のダブ・ヴァージョンで、音数を極限まで削ぎ落としたストイックな仕上がり。

あの頃のフミヤ氏のイメージを知ってる人ほど、不意を突かれる1曲。

MISIA / SWEETNESS(SATOSHI TOMIIE REMIX)

数多く存在するMISIAのリミックスの中でも個人的に好きなのがトミイエ氏によるこのリミックス。

原曲はしっとり系のスローバラードだが、このリミックスでは完全にDef Mixモード全開。

Def Production節炸裂の硬質なビートにドラマティックに展開するMISIAの歌声がどハマりしている。

KIRINJI / グッディ・グッバイ(FPM REMIX)

FPM(田中知之)が大傑作『Beautiful』をリリースしたあたりの絶好調期に手がけたリミックス。

KIRINJIの掘込氏の透明感あるボーカルに田中知之らしいエレガントなストリングスが重なってとにかく美メロ。

フロアだけじゃなく、ドライブ中のBGMとしても乙女心をくすぐる“モテハウス”に仕上がってる。

FLIPPER’S GUITER / BIG BAD DISCO(福富幸宏 REMIX)

1990年リリースのシングル「CAMERA! CAMERA! CAMERA!」に収録された異色のリミックス。

全長14分という長尺仕様で、小山田圭吾氏のヴォーカルが出てくるまで約7分という焦らし展開がエグい。

哀愁漂うピアノループにTB-303のアシッドベースがグニャグニャとうねり、その上を透明感あるヴォーカルがふわりと乗っかる。じわじわと引き込まれる中毒性の高い一曲。

Cornelius / Count 5.6.7.8(小西康陽 REMIX)

2010年にリリースされた「FANTASMA」のリマスター版のDisc2のみに収録されていたレア音源。

この曲はライブで必ず盛り上がる鉄板曲でアップテンポなリズムと攻撃的なギターが特徴ではあるが、小西氏ヴァージョンではギターが軽快なピアノに置き換わり、ヨーロピアンテイスト溢れる洒落たアレンジになっている。

小西氏らしい期待を裏切らない隠れた名リミックス。

YUKI / メランコリニスタ(Malawi Rocks REMIX)

DJ EMMAとTARO KAWAUCHIによる強力タッグで仕上げられた、原曲以上にフロアライクなハウスリミックス。

軽快なミディアムテンポの原曲を、グルーヴ感強めの4つ打ちビートで再構築。

随所に仕込まれたドラムロールがピークタイムのテンションをぐっと引き上げてくる。

思わずハンズアップせずにいられない、高揚感マシマシな仕上がり。

ORENGE PEKOE / やわらかな夜(Sunaga t Experience)

須永辰緒氏のセンスが光るジャジーでグルーヴィーな名リミックス。

原曲自体がすでに名曲の響きを放っていたが、その良さを少しも損なうことなくダンスフロア仕様にアレンジされている。

DJとしてはここぞというときに聴かせたい、お客としてはここぞというときに聴きたくなる名曲。

Sunaga t Experience / It’s you(DJ MURO REMIX)

邦楽という括りからは外れるが、須永氏の大名曲をDJ MUROが見事に再構築。

須永辰緒のサウダージ漂うボッサをベースに、MUROならではのソウルフルでファットなビートが加わり、一気にフロア仕様に変貌。

派手なアレンジはないが、音色の選び方と構成力が見事で、まさに“職人の仕事”。

原曲へのリスペクトとクラブフィールの絶妙なバランス感覚に唸らされる一曲。

平井 堅 / TUG OF WAR(United Future Organaization REMIX)

平井堅「Miracles」のシングルに収録された、United Future Organizationによる隠れたリミックス名作。

原曲は洗練されたアーバンソウルだが、UFOの手によってジャズグルーヴ全開のフロア仕様にアップデート。

ホーンセクションやラテンタッチのパーカッションが絡む、生音主体のクラブジャズサウンドと平井堅のソウルフルなヴォーカルとも見事に融合していて、90年代クラブジャズ黄金期の息吹が感じられる一曲。

くるり / ばらの花(REI HARAKAMI REMIX)

レイ・ハラカミ氏はDJではないが埋もれさせていけないリミックス。

京都を代表するアーティスト同士、波長が合うのか情緒的なメロディーと澄み切った音色が見事な化学反応を起こしている。

情緒的なメロディー、美しく透き通った音色、そして緻密な音のレイヤーが重なり、美しくも儚く、そしてちょっとセンチメンタルな気分になる曲。


いかがだっただろうか。

今回は2000年代を中心に、クラブ仕様へと見事に昇華された邦楽リミックスをピックアップしてみた。

自分がDJをしていた頃は、まだ配信なんてものはなく、CDJも今ほど一般的じゃなかった時代――プレイしたい曲は血眼になってアナログ探してた。

特にMISIAの「つつみ込むように」のリミックスは、偶然手に入れた一枚をSOUL系DJの仲間が万単位で買い取ろうとしてきたなんてこともあった。

今回紹介した楽曲にピンときたなら、関連するDJたちのMIX CDのレビューもぜひチェックしてもらえると嬉しい。

懐かしさの中に、今だからこそ刺さるグルーヴがきっと見つかるはず。

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