京都ではたまにこんな場所でというところでライブが行われることがある。
しかも大御所やこれから人気が出そうなアーティストだったりするから侮れない。
それぞれの会場はライブをするという目的で作られていないので音楽を聴く場所として適しているかといえば適していないのだがなんといってもアーティストとの距離感が戸惑うくらい近すぎて楽屋に招かれているような錯覚を覚える会場もあったりする。
今回は京都でちょっと変わった会場で観たライブを振り返ってみようと思う。
青葉市子@きんせ旅館
まずは日本最古の花街島原にある遊郭をそのまま旅館にして営業しているきんせ旅館で行われた青葉市子のライブ。
きんせ旅館は旅館営業のほかにカフェ営業もしており、今回のライブはカフェコーナーをライブスペースにしていた。
昭和を飛び越えて大正ロマンを感じさせる飴色の室内と青葉市子さんの歌声が見事にマッチしてノスタルジックなムードを漂わせていた。
開催されたころはちょうどコロナ禍で客数制限があり、ゆったりした環境でのライブを堪能することができてなんとも贅沢な時間だったことを覚えている。
CORNELIUS@京都国際会議場
京都市内で2000人以上のキャパを収容できるホールはロームシアター京都と国立京都国際会館がある。
ロームシアター京都は音楽ライブや演劇、講演会などが開催できる多目的ホールであるのに対し、国立京都国際会館は主に国際規模の会議を行うホールで、1997年に地球温暖化防止京都会議が開催され、この会議で「京都議定書」が採択されたことは教科書レベルで有名な話。
そんな会議メインのホールでなんとCORNELIUSのライブが行われた。
このライブはAMBIENT KYOTO2023の一環として開催し、いつものライブよりも視聴覚を刺激するような演出が施され、オープニングでメンバーが煙の中から現れてラストは煙と共に消えていくというサプライズな演出にグッときた。
普段は会議メインの会場だけに客席には長テーブルが備え付けられていてなかなか味わうことのできない環境でライブを楽しめた。
会議場だけに音響に懸念を抱いていたがスタッフのご尽力なのか普通のホールより音響が良く響いていて、特に小山田さんのヴォーカルがクリアに聴こえたことが良かった。
猫戦@サウナの梅湯
今回紹介する中でもっともライブ会場からかけ離れている銭湯で行われた猫戦のライブ。
会場は「銭湯を日本から消さない」のキャッチフレーズでお馴染みゆとなみ社が経営するサウナの梅湯。
猫戦はくるりやキセルを排出した立命館大学の軽音サークル「ロックコミューン」にて結成され、個人的に推しているバンド。
メロウでグルーヴィーなサウンドにスウィートな原田美桜のヴォーカルが力を抜いて自然体でいたいときにぴったり。
ヴォーカル、ベース、キーボードのトリオ編成でこじんまりながらも湯船の横にすっぽりおさまったいたのが愛らしかった。
観客は風呂椅子か洗い場に直接座るか、お湯のない湯船の中で鑑賞するなど銭湯ならではの鑑賞スタイル。途中、体勢がキツくならないようにラジオ体操を観客と一緒にしていたのが思い出深い。
さすがにお風呂ということで天然のリヴァーブ効果があり意外にも音響効果は良し。
KYOTOJAZZ SEXTET@フォーチュンガーデン京都
京都は近代建築の宝庫。
京都市内を散策すれば数多くの名建築があり、なかにはカフェやレストランが併設されている場所もあり、1927年に施工された島津製作所旧本社ビルをリノベーションし、レストラン、ウェディング、パーティースペースとして営業しているフォーチュンガーデン京都もそのひとつ。
その名建築の中にあるチャペルを使ってライブをしたのが、世界のクラブジャズシーンで多大な影響力を持つ沖野修也率いるKYOTOJAZZSEXTET。
会場の内装はイメージどおりの教会といった感じで、木の温もりがあって天井が高く開放感があり、客席は背もたれがついた横長のベンチ椅子。
新郎・新婦のハレの舞台にクールなジャズメンたちが白熱のライブを至近距離が鑑賞できる環境が最高だった。
Terry Riley@清水寺
世界遺産で一生に一度の歴史的ライブ
ミニマル・ミュージックの金字塔として今もなお語り継がれるテリー・ライリーの「In C」。
その名曲が2024年に誕生から60年ということで、テリー・ライリー本人の強い希望のもと、7月21日の満月の夜の清水寺の舞台でテリー・ライリーをはじめSARA(宮本沙羅)、大野由美子(Buffalo Daughter)、蓮沼執太など総勢50名以上で演奏された「In C」奉納公演。
チケットは発売と同時にソールドアウト、世界遺産の舞台で満月の夜に「In C」という一生に一度しかない機会での伝説ライブ。
大自然と神仏、そして宇宙とも融和した壮大なロケーションは京都ならではのライブ会場。