90年代初期、テクノ黎明期の貴重なDJ MIXをリリースしていたレーベル!K7の看板シリーズX-MIX。
93年にリリースされた記念すべき1作目のPAUL VAN DYKから98年リリースのHARDFLOORまでテクノDJのプレイ・DJ機材がまだまだ発展途上なころのDJ MIXが収録されていてテクノDJにとってレジェンド的扱いされているシリーズ。
なかでも97年にリリースされたKEN ISHIIのDJ MIXは今聴いても選曲に色褪せが全く感じさせない。
この選曲は真似できない!テクノゴッドのセンスが凝縮したDJ MIX「 Ken Ishii / X-MIX」
リリース元である!K7はもともと映像主体のレーベルでしたが93年に音楽部門を立ち上げ、X-MIXと幅広いジャンルのDJ MIXを紹介しているDJ Kicksという名門シリーズも展開している。
映像主体のレーベルだけあってこのX-MIXはVISUAL版もあり、DJが選曲したテクノに合わせてサイケデリックかつ機械的なビデオクリップを収録したVHS版もリリースされていた。
その中でも今回取り上げたいのが、ドイツの伊達男・DJ HELLによるDJ MIX。
エレクトロっぽさは控えめで、選曲の軸にあるのは90年代初頭のデトロイトテクノ、シカゴハウス、そしてNYハウスと、派手さはないけれど、深みとグルーヴでじわじわ引き込まれるミックスになっている。

1 Sound Vandals / On Your Way
2 DJ Skull / Don’t Stop The Beat
3 Tronikhouse / Smooth Groove
4 Surgeon / Atol
5 Phortune / Can You Feel the Bass
6 Richard Bartz / B1
7 Mike Dearborn / Nesw Dimension
8 Steve Poindexter / Let’s Work That Motherfucker
9 E-Dancer / Pump The Move
10 Ron Trent / The Afterlife
11 K Alexi Shelby / All For Lisa
12 IO / Station to Station
13 Random Noise Generation / Hysteria
14 Etat Solide / Think About it
15 Bernard Badie / Can You Feel It
16 Nick Holder / Erotic Illusion
17 Bobby Konders / Let There Be House
18 DJ Hell / My Definition Be House
19 DJ Hell / Herz
DJ HELLは、2000年代初頭に広まったエレクトロクラッシュやニューウェーヴ・リヴァイバルで重要な役割を果たした人物として知られている。
キャリアのスタートは1992年。
ベルギーの老舗レーベルR&Sから「My Definition of House Music」でデビュー。を果たす。
1996年には、自身のレーベル〈International Deejay Gigolo Records〉を立ち上げ、Jeff Mills、Vitalic、Tigaなどの作品をリリースし、ヒットを記録している。
中でも、Christopher Justの「I’m a Disco Dancer」は代表的なヒット曲のひとつ。
過剰でクセのあるエレクトロサウンドが話題を呼び、Gigoloレーベルの方向性を象徴するような曲でもある。
ほかにも、DJ HELLの代表曲として有名なのが「Copa」。
バリー・マニロウの「Copacabana」をサンプリングし、ラテンディスコの要素を取り入れたフロア向けの仕上がり。
2000年以降のDJ HELLは、ニューウェーヴの影響を色濃く反映させたエレクトロ・サウンドでスタイルを確立していくが、このX-MIXではそうしたグルーヴは一切感じられず、テクノやハウスのルーツを丁寧に掘り下げたような選曲が特徴となっている。
ミックスの幕開けを飾るのは、NYのカルトレーベルNu Groove RecordsからリリースされたThe Sound Vandals「On Your Way」。
現在のDJ HELLのイメージからはやや意外な選曲となっている。
90年代初期のDJたちに支持されたシカゴのプロデューサーDJ Skullによる「Don’t Stop The Beat」も収録。
チープなビート感、小気味よく走るアシッドベース、そしていかにも90年代らしいシンセ使いが特徴的な1曲。
このDJ MIXの中でも特に耳を引くのが、随所に挿し込まれたシカゴ産のアシッドハウスで、中でもPhortuneの「Can You Feel The Bass?」はインパクト抜群。
チープなビートにピコピコとしたベースライン、そして感情を排した語り口調が独特の色気を生んでいる。
疾走感のあるスカスカなビートに、ひたすら繰り返される放送禁止用語のヴォイスループが突き刺さるSteve Poindexter「Work That M************r」。
シンプルながらも強烈なインパクトを放つDJユースなトラック。
当時のテクノDJにとって“課題曲”とも言えるE-Dancer「Pump The Move」をカットインで挿入。
独特のシャリついたハイハットが耳に残るこのトラックを見事なタイミングで差し込んでくる。
この曲を使ったMIXとして今なお語り継がれているのが、田中フミヤ氏による『Mix-Up Vol.4』に収録されたライブ録音。
男気溢れる大胆なカットインが冴え渡り、録り直しの効かない一発録りのDJ LIVE MIXではありえない強メンタルなプレイを聴かせてくれる。

ここまでテクノの名曲で一気に引き上げてきたグルーヴの中で、突如差し込まれるのがシカゴハウスの重鎮Ron Trentによる「The Afterlife」。
あえてこのタイミングでDEEP HOUSEを挿し込むあたりなかなかの技あり。
シカゴのベテランK-Alexi Shelbyによる「All for Lisa」は、デリック・メイ主宰のTransmatからリリースされた一曲。
端正なリズムとソウルフルな感覚が共存する仕上がりで、シカゴとデトロイトをつなぐようなグルーヴを感じさせる。
Nick Holderによる「Erotic Illusions」は、チープなビートに暖かみのあるベースライン、そして“エロティック”を匂わせる抑制されたヴォーカルが特徴。
ゆったりと深く染み込むグルーヴは、当時のディープハウスを象徴するサウンドで、今でも色褪せない魅力を放っている。
続いて登場するのはBobby Kondersによる「Let There Be House」。
妖艶なシンセメロディーとピアノフレーズが印象的で90年代初頭の空気感を強く感じさせる一曲。
ラストを飾るのは、DJ HELL自身の初期作品「My Definition of House」と「Herz」という自身のルーツを象徴するような2曲で締めくくっている。
いかがだっただろうか。
90年代初期〜中盤にかけてDJミックス作品のリリースは現在と比べて極端に少なく、こうしたX-MIXのようにオフィシャルで発表されたシリーズは、その時代のDJスタイルや選曲を知るうえで非常に貴重な記録となっている。
当時は、現在のような高性能なイコライザーやミキサーがまだ十分に整っていなかったにもかかわらず、各曲の繋ぎには違和感がなくグルーヴが途切れることもない。
手作業の感覚と耳の精度だけで構築されたミックスは、今聴いても技術とセンスの高さを感じさせる。
X-MIXシリーズは全10作がリリースされているが特に初期5作には、いかにも90年代らしいレトロな質感を持つテクノ・クラシックが揃っており、現代のテクノと聴き比べてみるとかえって新鮮に響く場面も多い。
現在ではレジェンドとして語られることの多いDJ HELLによる、こうしたクラシックな選曲と当時のDJ手法を知ることができるのは、このX-MIXだけ。
一聴の価値がある作品。
↓X-MIXシリーズと並ぶDJ MIXのバイブル
