アシッドハウスといえば必ず名前が挙がるのがハードフロア。
ドイツのユニットながらシカゴ発のオリジナルアシッドハウスをさらに進化させ、次世代のアシッドハウスの扉を開いた存在。
1993年リリースの『TB-Resuscitation』は、90年代のテクノシーンに大きな衝撃を与え、今なお多くのファンに愛され続けている名盤。
個人的にはリアルタイムでこの名盤を体験することは叶わなかったが、アシッドハウスの世界に足を踏み入れるきっかけとなったのが、ハードフロアの代表曲『Acperience 5』。
この曲は石野卓球氏のMIX CD「MIX-UP」にも収録されていて、あのTB-303の幻覚的なシンセサウンドに一発でノックアウトされた記憶が鮮明に残っている。
今回はアシッドハウス界のレジェンド、ハードフロアがテクノの名門レーベル「iK7」からリリースされた唯一のDJ MIX CDを紹介。
HARDFLOOR presents X-MIX Jack the Box

1 Hardfloor / I Can’t Complain
2 bambam / Where Is Your Child
3 Co-Jack / Nightshift
4 Phuture / The Creator
5 Armando / Land of Confusion
6 Fast Eddie / Let’s Go
7 Hardfloor / Safety Razor
8 Housemaster Boys / Housenation
9 Adonis / The Poke
10 Hardfloor / Bodymove
11 Dj Pierre / Box energy
12 Gentry Ice / Do You Wanna Jack
13 Fast Eddie / Acid Thunder
14 Cool House / Rock This Party Right
15 Steve Pointexter / Born To Freak
16 jack Frost / Tom Tom
17 Phuture / Spank Spnak
18 Adonis / No Way Back
19 Sparky / Acid House
20 Sleezy D / I’ve Lost Control
内容はもちろん混じりけなし、純度100%のアシッドハウスオンリー選曲
古き良きシカゴ産アシッドハウスを中心に、ハードフロアが影響を受けたアーティストたちに敬意を表した選曲。
オープニングは自身のトラック「I Can’t Complain」から始まり、シカゴ産アシッドの定番、男声ヴォイスサンプルが妖しく響くBAM BAMの「Where Is Your Child」へと続く。
シカゴハウス全盛期に数多くの名曲を生み出した名門レーベル「TRAX」からDJ Pierre率いるPhutureの登場。
シンプルながらもエロティックなベースラインに、タフな語りとセクシーな男性ヴォーカルが絡み合う「The Creator」は、まさにシカゴアシッドの象徴的トラック。
そして、緊迫したフロアのテンションの息抜きさせる定番曲として多くのDJに愛されるARMANDO「Land of Confusion」。
田中フミヤ氏がYELLOWのクロージングパーティーでこの曲をプレイしていた光景が今でも思い出す。
シカゴ産ヒップハウスの名曲Fast Eddie「Let’s Go」。
ジャンジャンと刻まれる豪快なサンプリングネタが印象的で、DJにとって扱いやすいトラックとしてよくプレイされている。
次は、ボイスサンプルでリズムを刻むHousemaster Boyz「HouseNation」。
ひたすら「ハウスネーション」と繰り返すだけのシンプルなボイスループが効果的なトラック。
この曲はROGER SANCHEZのLIVE DJ MIXでも選曲されていて、ヴォイスループを活かした最高のロングミックスを披露している。
そして、シカゴハウスを語る上で絶対に外せないのがADONIS「No Way Back」。
硬質なリズムに、艶っぽいベースライン、そして低く囁くようなセクシーヴォイス。
前半で登場した「The Creator」と同様に、どこかエロティックな空気が漂う中毒性のあるグルーヴ。
妖艶で中毒性のあるグルーヴがじわじわと身体を侵食していく。
たたみかけるようなリズムと唸るTB-303でフロアのテンションを一気に引き上げるHARDFLOOR「Bodymove」から、アシッドハウスの創始者のひとりDJ PIERREによる「Box Energy」へと続く展開が見事。
前のめりなビートとうねるベースラインの流れが自然で、濃厚なアシッド・グルーヴが途切れることなく連なっていく最高の瞬間。
DJ Pierreは90年代にシカゴを離れニューヨークへ拠点を移し、名門レーベルStrictly RhythmではA&Rとして活躍し、数多くのアーティストをサポート。
自身も『Mix the Vibe』シリーズに登場するなど現場のDJとしても存在感を発揮。
6曲目で登場したFAST EDDIEが再び登場。
今回は、ピコピコとしたTB-303のリフが印象的なアシッドハウス名曲「Acid Thunder」。
そして続くのは、ハードフロア好みのシンプルなTB-303使いが光るSTEVE POINDEXTER「Born to Freak」。
無機質なグルーヴの中にうねるアシッドラインがクセになるシカゴ・アンダーグラウンドな一曲。
このままテクノには寄り道せず、純度100%のアシッドハウスで突き進む終盤戦。
ここで登場するのは、アシッドハウス史に残る屈指の名曲PHUTURE「Spank Spank」。
ミックス次第で爆発力が変わる、DJの手腕が問われるガチの勝負トラック。
そしてラストを飾るのは、シカゴアンダーグラウンドの深淵を象徴するSLEEZY D「I’ve Lost Control」。
フィナーレにしては派手さはなく、むしろダークで沈み込むような着地。
派手に終わらないことで余韻が残る、まさに通好み。
アシッドハウスだけで全20曲、66分の構成。
ここまでアシッドハウスに特化したDJ MIXは非常に珍しく貴重な一枚。
同シリーズからはDJ HELLもリリースしていて、彼の作品はエレクトロ色を排した純粋なテクノ選曲でミックスしているので興味がある人はぜひチェック↓