
京都に移住して15年以上になるが、京都駅より南に足を運ぶことはほとんどない。
市営地下鉄もよく使うが乗るのはたいてい京都駅〜国際会館の区間。
そんななか、ふと気になったのが市営地下鉄烏丸線の終点「竹田」駅。
「四条」「烏丸御池」「北大路」など、京都らしい駅名が並ぶなかで、どこか味気なく響く「竹田」。
いったいどんな場所なのか、確かめたくなり竹田へ向かう。

地下鉄でありながら烏丸線唯一地上に駅がある。

場所は京都市伏見区。
竹田という地名には歴史的な背景があり、豊臣秀吉が京の周囲に築いた「御土居(おどい)」の出入り口として設けた「京の七口」のひとつ「竹田口」があったとされる。
普段の生活でもなかなか降りる機会がなく、ましてや観光で立ち寄ることはまずない「竹田駅」をぶらりと散策。
結論から言うと予想に反して、わざわざ下車する価値のあるスポットにいくつか発見することができた。
▪️ 隠れた中華料理の名店「揚子江」

竹田駅西口から徒歩1分。
「こんな場所に?」と思わずつぶやきたくなるような、路地の奥まった場所に、元ホテルのシェフが営む本格中華の店「揚子江」がある。
カウンター席とテーブル席が2席という、こじんまりした店内には地元の常連客で賑わっている。
ランチメニューは、しっかりボリュームがあって950円。
このクオリティと価格で出してくれる中華はなかなか貴重。


■ INFORMATION ■
【店 名】揚子江
【住 所】京都市伏見区竹田西桶ノ井町27
【営業時間】11:00〜14:30 / 18:00〜21:00
【定 休 日】土、日
▪️気軽に天然温泉「伏見力の湯」

竹田駅から徒歩5分ほど。
観光地のイメージが強い京都市内では数少ないローカル感あふれるスーパー銭湯「伏見 力の湯」がある。
周辺は住宅地とスポーツ施設に囲まれ、利用客もほとんどが地元の常連か隣接施設の人たち。
スーパー銭湯というより地域に溶け込んだ“広めの銭湯”といった雰囲気。
入浴料は平日750円、土日・祝でも850円と手頃で、シャンプーやボディソープは備え付け、タオルの貸し出し(有料)もあるので、手ぶらでも立ち寄れるのがありがたい。
露天の天然温泉や広めのサウナもあり、ふらっと立ち寄ってしっかりリフレッシュできる穴場スポット。


■INFORMATION■
【店 名】伏見力の湯
【住 所】京都市伏見区竹田青池町130
【営業時間】10:00〜23:00(最終受付22:30)土日のみ8:00〜23:00
【定 休 日】不定休
▪️城南宮

竹田駅周辺に観光名所はないかと調べてみたところ、徒歩10分ほどの場所に「方除(ほうよけ)の大社」として知られる城南宮があったのでふらりと訪れてみた。
日々の暮らしの中では、悪い方位に行くことや家の間取りが良くないことがあります。
方位の障りや家相の心配が無いように祈願することを方除と言います。



城南宮で有名なのが平安貴族の水辺での歌遊びを再現した雅な行事「曲水の宴(きょくすいのうたげ)」

曲水の宴とは色とりどりの平安時代の装飾を見につけた7名の歌人が、琴の音が響く中、歌題にちなんだ和歌を詠み、それぞれ短冊にしたため、神様に奉納する神事。
城南宮には、広大な敷地を誇る神苑「楽水苑」があり、四季折々の花々が訪れる人を楽しませてくれる。
「源氏物語 花の庭」としても親しまれており、その作庭を手がけたのは、昭和の小堀遠州とも称された名造園家・中根金作。
苑内は「春の山」から始まり、「平安の庭」「室町の庭」「桃山の庭」「城南離宮の庭」と、趣の異なる5つのエリアで構成されている。
それぞれの庭には、各時代の美意識や情緒が丁寧に表現されており、まるで時代をめぐるような庭園散策が楽しめる。




■INFORMATION■
【名 称】神苑 楽水苑
【住 所】京都市伏見区中島鳥羽離宮町7
【拝観時間】9:00〜16:30(最終受付16:00)
【拝 観 料】大人(中学生以上)800円、小学生500円
▪️おまけ
城南宮といえば、幕末ファンにはお馴染みの地。
戊辰戦争の幕開けとなった「鳥羽伏見の戦い」の初戦が繰り広げられた場所として知られている。
薩摩軍が西洋式の大砲で旧幕府軍を圧倒した戦として有名だが、その歴史の舞台がまさにこのあたり。
ふとGoogleマップで「城南宮」を検索してみたところ、「鳥羽伏見戦跡」という表記があったので、実際に足を運んでみた。

場所は城南宮から歩いて5分程度。
現地に着くと、住宅街の一角にひっそりと鳥羽伏見戦跡の石碑を発見。
立派な観光案内があるわけでもなく、気づかなければそのまま通り過ぎてしまいそうな場所。



そしてその戦が戊辰戦争の引き金になったことが記されていた。
京都市民でもなかなか下車する機会のない竹田駅周辺をふと思い立ってぶらり散策。
観光地らしさはなく、静かな住宅街といった印象が強いけれど、「京の七口」のひとつというだけあって電車や車の交通アクセスは申し分なし。
「何もない」と思われがちな「竹田駅」だが、実は地元ならではの穴場が点在していて、個人的におすすめしたいのが・・・
伏見力の湯で朝風呂を楽しみ、揚子江で本格中華のランチをいただくという贅沢コース。
観光というより“生活の延長にある贅沢”という感じで、月に一度はこのコースを満喫している。