
筆者が個人的に“神サブスクリプション”と捉えているのがApple Music。
月額1,080円でメジャー・インディーズ問わずあらゆる楽曲が聴き放題。
新作もリリース当日にすぐアクセスできるため音楽ファンにとっては非常に魅力的なサービスだ。
今回は、CDでは流通しておらずApple Musicでのみ聴くことができるDJ MIXの中から、筆者が日常的に聴いているハードテクノ系の作品をいくつか紹介していきたい。

筆者紹介・・・元大手CDショップにてクラブ/テクノのバイヤーを担当。
ケン・イシイ、石野卓球、田中フミヤ、DJ EMMAといった日本のレジェンドDJたちを敬愛。
自身も趣味でDJ活動を行い、現在も定期的にクラブへ足を運び続けている、音楽熱の冷めないアラフォー世代。
RISA TANIGUCHI / VISION
ベルリンの伝説的レイヴ「LOVE PARADE」の後継イベント「RAVE THE PLANET」に唯一の日本人DJとして参加し、さらにドイツの名門テクノレーベル「CLR」からEPをリリースするなど、今や世界のテクノシーンで確かな存在感を放つRISA TANIGUCHIによるオールハードテクノミックス。
手加減なしの高速グルーヴと硬質なビートがひたすら続く中、個人的ハイライトは17曲目に登場するJEFF MILLS、MIKE BANKS、ROBERT HOODによる伝説ユニットX-101「Sonic Destroyer」。
90年代レイヴの狂気とエネルギーを今に蘇らせる鋭利なシンセが炸裂し完全にフロアのボルテージを爆発させる。
クラシックでありながら今聴いても新しいこの曲をここでブチ込むセンスも含めRISA TANIGUCHIの本気度が伝わるミックス。
KEN ISHII/ Contact Live Mix
ジャパニーズテクノ黎明期を支え、今なお世界で存在感を放ち続けるトップDJKEN ISHIIによる最新DJ MIX。
収録されているのは、2023年12月30日に行われたEnter Shibuyaでのライブ音源。
現場の熱量と一体感をそのままパッケージしたような臨場感が詰まっている。
内容はまさに“今”のケン・イシイそのもので、ひたすら突き進むような疾走感あふれるハードテクノの連続でハイライトはROBERT ARMANIのクラシック「Circus Bells」のKen Ishii Remix。
オリジナルのエッジを残しつつも、現代的な鋭さと爆発力を備えたこのリミックスがフロアで鳴り響いた瞬間、間違いなく会場は歓喜の渦に包まれたはず。
ベテランの貫禄と進化を同時に体感できる圧巻のミックス。
石野 卓球 / NYE2023
オフィシャルなDJ MIXとしては2005年の『A Pack To The Future』以来となるであろう今回の作品。
電気グルーヴとしてだけでなく、ソロDJとしてもシーンの最前線を走り続ける石野卓球の”いま”を真空パックしたような最新DJ MIXが月額980円で聴けるのは正直破格。
自身も何度も現場で体感しているという京都METROでのプレイを彷彿させる選曲は、まさに現在の卓球さんのDJスタイルそのもの。
大箱仕様ではなく小箱の親密な空間にフィットするようなテンション感が家の中で聴いても心地いい。
2023年1月19日に京都METROで披露された楽曲も多数収録されておりフロアの記憶が鮮やかに蘇る。
中でも印象的だったのが6曲目のWILL CLARKE & BOT「Techno(Not Techno)」。
そのひねりの効いたミニマルグルーヴに思わずニヤリとさせられる。
そして10曲目JOEL CORRY & DA HOOL「The Parade」。
懐かしのシンセフレーズを現代的にアップデートしたピークタイムにぶち上がるキラーチューン。
今の卓球氏のプレイを知るのに最適なミックス。
JUN INAGAWA / Contact
JUN INAGAWAによる最新DJ MIXは彼のバックグラウンドである90sレイヴカルチャーへのリスペクトが見事に融合したアップリフティングかつ高揚感たっぷりの内容。
冒頭からいきなり石野卓球ファンにはたまらない展開。
石野卓球の変名プロジェクトNINJAHEADによるアシッド・クラシック「Pulseman vs Sineman」から、マイク・ヴァン・ダイクの「Gamer’s Night(石野卓球Remix)」へとミックスする流れは、開始早々に鳥肌モノのブチ上げ選曲。
終盤ではTHE CHEMICAL BROTHERSの「It Began In Africa」からUNDERWORLD「Two Months Off」へのミックスという当時の熱狂を現代的な解釈で再構築していて、40代以上の自分にはまさに刺さる選曲。
レイヴの記憶を持つ世代にも、これから知っていく若い世代にもぜひ聴いてほしいミックス。
CHRIS LIEBING / Miami Music Week 2024
ドイツ・フランクフルトのハード・ミニマル番長CHRIS LIEBINGによる「Miami Music Week 2024」でのライブDJミックス。
2002年のDJ RUSH「Get On Up (Chris Liebing Remix)」で一躍シーンに名を刻んだ彼のスタイルは、20年以上経った今でも全くブレなしの直球勝負。
今回のミックスも冒頭からラストまでノンストップで重低音の波を叩きつけ、ハード・ミニマルの真骨頂を存分に見せつけてくれる。
派手なブレイクやキャッチーな展開は皆無、それでもひたすら縦ノリで体を持っていかれるこの中毒性。
ストイックに踊り倒したい人に全力で推せる一発。
ハードミニマル好きなら、間違いなくCHRIS LIEBINGを体感しておくべきミックス。
HIROKO YAMAMURA / NYE 2024
シカゴを拠点に世界中のクラブやフェスで活躍するDJ/プロデューサーHIROKO YAMAMURAがApple Music限定のDJ MIXシリーズ「NYE(New Year’s Eve)」に登場。
内容はまさにフロア即対応のアシッド・テクノ攻め。
本場シカゴで鍛え上げられたセンスとグルーヴ感が炸裂していて、太くて黒いボトムヘヴィーなトラックがノンストップで襲いかかる。
単なる疾走感だけでなくサイケデリックでトリッピーな展開もあり、緻密に構成されたストーリー性あるミックスに仕上がっている。
HIROKO YAMAMURAのプレイを初めて聴く人もフロアで体験済みの人にもおすすめ。
NINA KRAVIZ / Tomorrowland Winter 2023
個人的に今いちばん推しているフィメールDJ、NINA KRAVIZによるDJセットは標高2000m超の雪山で開催された「Tomorrowland Winter 2023」で披露されたライブ音源。
自然とテクノの融合という非日常的なシチュエーションの中、ただの”アゲアゲ”で終わらせない変幻自在な選曲で会場を圧倒。
PHUTURE、PAUL JOHNSONといったシカゴハウスのレジェンドから、DJ GODFATHER、DJ DEEONといったゲットーテクノの荒削りなビートまで織り交ぜ、さらにTHEO PARRISH、CARL CRAIGといったデトロイトテクノの深みまで網羅。
中でも異彩を放っていたのがDAFT PUNK「Revolution 909」。
彼女の攻めの流れにスッと溶け込みながらも、抜群のタイミングで空気を和らげるような絶妙なアクセント。
豪雪の中、極寒のフロアを熱狂に変えたこのライブ音源はまさに必聴。
CLOSET YI / NYE 2023
韓国のフィメールDJデュオ・C’est QuiのメンバーCLOSET YIによるDJ MIX。
詳しい情報は少ないけれどBoiler Roomでのプレイを気に入り、Apple Musicで見つけたこのMIXを思わずチェック。
内容は90年代テクノやトランスを思わせる懐かしいシンセサウンドが中心。
トランスっぽい高揚感、サイケ寄りのグルーヴ、ディスコっぽいバブリーなシンセ音などちょっとクセのある選曲だけど40代の自分にとっては耳なじみが良い。
特に4曲目から5曲目へのつなぎが秀逸で、懐かしいけど古くない絶妙なバランス感が光ってる。
90年代テクノ好きにおすすめのミックス。
ADAM BEYER / ANTS Live,Aug 10,2024
北欧テクノの旗手・ADAM BEYERがイビザの人気クラブ「ウシュアイア」でプレイしたライブDJ MIX。
自身のレーベルDrumcodeを19歳で立ち上げた彼が魅せる開放感ある大箱仕様の選曲が炸裂。
序盤3曲目で早くもCID & SPANKOX「To the Club」を投入。
ドラムロールが炸裂しフロアのボルテージは一気に上昇。
中盤では、もはや原曲がわからないほど多くのヴァージョンがあるEDDIE AMADOR「House Music」のヴォイスループが炸裂。
鉄板ネタながらフレッシュな響き。
ハードテクノというよりはハードハウス寄りのグルーヴだが、それもこの会場の空気感にマッチしていて◎。
イビザを熱狂させたパーティー感全開のミックス。
JEFF MILLS / One Mix With
テクノ界の巨匠 JEFF MILLS が最新の空間オーディオ技術を駆使したDJ MIXを発表。
クラブの臨場感というよりリスニングに特化した音響アート。
まるで宇宙空間に放り出されたかのような浮遊感を体験できる。
空間オーディオならではの前後左右、上下に音が広がる立体的なサウンド設計。
頭上からは効果音、左右からハイハット、下からバスドラムが響くような「聴く」というより「体感する」構造。
序盤はスローテンポでスペーシーなテクノで中盤以降はジェフミルズらしい硬質で宇宙的なハードテクノへと展開。
1本のSF映画のような流れを感じさせるストーリーテリング型のMIX作品。
ヘッドフォンでの没入リスニングにおすすめ。
いかがだっただろうか。
ここで紹介したようなDJ MIXが月額980円で自由に聴けるのはかなり充実している。
CDでのDJ MIXのリリースは制作・流通のハードルが高く新人にはなかなか難しいが、配信という形なら表現の場は一気に広がる。
ベテランから若手までそれぞれの個性が詰まったミックスを気軽に楽しめるApple Musicをぜひお試しあれ。
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